文化をツールとして使いこなすためのヒント(第五回)組織を読み解く6つの次元(切り口)ー次元5組織外への接し方、次元6経営の重点(従業員志向対仕事志向)ー

2017年02月16日 宮森 千嘉子[イティム・ジャパン株式会社バランスト・グロース フェロー

前回に引き続き、ホフステードの組織文化の次元を解説します。今回は、組織満足度に影響を与える2つの次元について見ていきましょう。 次元5 組織外への接し方 次元6 経営の重点(従業員志向⇔仕事志向)

次元5 組織外への接し方(オープンなシステム 対 閉鎖的なシステム)

D5.png この次元は、コミュニケーションに関わる次元です。新入社員や中途入社の社員もすぐに馴染む事ができるオープンなシステムでは、重要な情報は全員に伝達され、組織間のコミュニケーションも活発です。メンバーが成果を上げ、かつ働きやすさを感じられる環境を生み出しますし、介護や育児など、個人的な問題についても相談しやすくなります。 一方、なかなか馴染みにくい組織、内向的組織というのものも存在します。閉鎖的すぎる組織文化、スコアが75-100と診断されると危険領域に入ります。 通常は、経営陣に近いほど組織文化はオープンで、階層が下に行くほど閉鎖的になる傾向があります。しかし、ある企業でマネジメントチームが85という閉鎖的なスコアを示したことがあります。コンサルタントが組織文化診断結果のサマリを事前に送付し、役員会議で説明をしようとした時、社長から「あなたは部外者だから私達のことを理解できるわけがない」とのコメントがありました。離職率が極端に低く、入社以来、長年に渡って努力を重ね、結果を出してきた人だけが役員になれる仕組みでしたが、診断の数年後に会社更生法を申請しました。 一方、スコアが0という極端にオープンなスコアを持つ経営陣がいた企業では、産業スパイ事件が発生し、その結果として非常に厳格な情報管理基準が導入されました。これは極端な例ですが、機密情報を扱う組織はある程度閉鎖的な文化を持つ方がいいでしょう。

次元6 経営の重点 (従業員重視⇔仕事重視)

D6.png この次元は、経営の哲学として、福利厚生を含む従業員の幸せに配慮するか、あるいは経営陣の関心は従業員が行う仕事だけなのかを測ります。仕事志向の強い組織では、従業員は仕事の結果を出さなければいけないという強いプレッシャーを感じています。最近、経済的な苦境に陥った組織、特に人員削減をせざるを得なかった組織は、仕事志向の強いスコアを示すことがあります。これまでの私達の30年の研究では、仕事重視の組織文化を長期的に続けると組織が破綻することが明らかになっているので、危険水域を75-100と設定しました。 この次元も、経営陣は従業員志向のスコアが高く、階層が下に行くほど仕事志向に寄る傾向があります。トップが「ワークライフバランス」を標榜しても、実際昇進するのは長時間労働を厭わない人達であるなど、実態と乖離があれば、現場は仕事志向になります。 別の見方をすれば、この次元では経営陣のリーダーシップが鍵になります。あまりにも従業員志向にしてしまうと仕事のパフォーマンスが出ないのではないかとの質問を受けることがありますが、次元1の目的志向を強くし、次元6を従業員志向にすれば、組織文化が仕事へのモチベーションを高めることになります。製造・技術志向から市場・サービス志向への転換を成し遂げ、リーマンショック後の不景気でも解雇をしなかった北欧系の航空会社では、スコア10と極めて社員志向の強いスコアが出ていました。一方、目的志向が高く仕事志向の強い組織文化では、従業員が疲弊しバーンアウトしていく恐れがあります。 ホフステードの組織文化の次元は組み合わせて使うことで、職場の課題やチャレンジを紐解き、変革を支援することが可能です。次回は次元の組合せについてご紹介する予定です。

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