イノベーションに女性視点を活かすには?〜"見えない"言葉の壁がもたらす可能性〜

2014年10月30日 祖父江 玲奈[バランスト・グロース パートナー

発想を豊かに考えを広げ、違う案を出していく、ブレインストーミング。部署で新しい企画を考えたり、問題解決策を考えているとき、ブレインストーミングを行うことは多くあると思います。 新商品の企画やビジネスのあるべき姿を描くとき、提案したい計画の案や、求められている価値など多くの形容詞なども含まれます。しかしここに “見えない”言葉の壁が男女の間にあるのです。 言葉の壁を意識して、発想を変えたり広げていく可能性をどのように広げていくのか、考えてみたいと思います。

●言語能力に優れる女性

男性と女性で比較すると、言語能力、特に話す能力は女性の方が高いと言われています。この言語能力の差は学術調査などでも明らかになっています*1。 女性の言語能力が優れている一つの要因は、脳の違いによると言われています。脳の言語野は、女性脳は男性脳より17%大きいと言われています。脳のより大きな割合を言語に使っているため、女性脳のほうが男性脳より言語能力が高いのです。 また、言葉を理解する際に男性は左脳のみを使っているのに対し、多くの女性が左右の脳を使っていることがMRI(磁気共鳴映像装置)を使った実験で確認されています。脳疾患にかかった場合、女性の方が失語症になりにくく、治りやすいという医学的な事実があるが、これも男女の言語機能の性差によるものと考えられています。 他にも、女性の方がより多くのニューロン細胞が言語に使われているなど複数の説がありますが、女性の方が言語能力が高いということはいろいろな形で証明されています。 male-and-female-brain.jpg 男性と女性の脳 活動範囲の違い

●”見えない”言葉の壁

日本では男性を中心とした会社組織が多いため、ビジネスでのコミュニケーションは男性のコミュニケーションスタイルを中心とする組織文化でできており、女性は知らず知らずのうちに自分を合わせています。 男性と女性の言葉の壁は普段はなかなか見えづらいのですが、男性側の「女性の意見は直感的で根拠がわかりづらいので苦手」といった意見や、女性側の「情緒的な意見を言うと受け入れられなかった」と言った経験が実際には存在しています。その結果、女性は社会人(=男性中心の組織に適合する人材)として男性を模倣した考え方のほうが安全のため、自分自身の感性を活かした発言はあまりしない行動様式となります。 日本企業の中で求められている能力の一つは「上司の意図を察して機敏に行動する」こと*2と劇作家の平田オリザさんは書かれていますが、男性中心の組織に合わせて空気を読む、と言う組織の期待値が存在することで、女性にとっての言葉の壁は大きく立ちはだかっているのです。 男性の長所と女性の長所が生かされることによって、もっと大きな成果を望むというのがこれからの企業の課題といってもよいでしょう。

●言葉の可能性を引き出すコミュニケーション

言葉には解釈の余地があり、男性女性の言葉の差が解釈のずれになることもあります。しかし逆に、男女の違いである”見えない”言葉の壁を使うことで、より多くの発想を得られる可能性があります。 それがビジュアルを使うブレインストーミングです。ブレインストーミングの場は一般的に単語や文章で行われてきました。しかしそのプロセスに、ビジュアルを使用するステップを入れるのです。 単語や文章で表現されたアイディアを視覚的な世界観としてイメージで表現することで、メンバーが持っている言葉の解釈が引き出され、共有されます。イメージ画像の持つ情報量は言葉で表現されるよりはるかに多いので、単語で表現されていた価値観や感情、アイディアなどを豊かな世界観として表現することができます。デザインのムードボードのようなものと考えるとよいでしょう。 ビジュアルの収集は近年、とても簡単になりました。その一つとして、Pinterestというサービスがあります。Web上でスクラップブックを作るサービスで、アメリカでは女性に絶大な人気があります。 スクリーンショット 2014-10-30 3.46.56.png 具体的な方法として、単語と合わせて簡単な絵を描く方法や、雑誌の切り抜きなどを利用してブレインストーミングそのものをビジュアルで進める方法などがあります。 ビジュアルについて女性が話すことにより、さらに言語化して広げていくこともできます。 男性は論理的な展開を得意としているので、言葉を論理的に組み立てる・分析するという時は男性の強みを活かし、そこに女性が得意とする言語能力の幅を活かすためにビジュアルを意識的に使うことで、”見えない”言葉の壁を阻害要因から成功要因に変えることができるといえるでしょう。

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【祖父江玲奈】 ☆ イノベーションに女性視点を活かすには? 〜女性の「気づく力」による発想力の可能性〜イノベーションに女性視点を活かすには? 〜女性の共感力がヒット商品を生み出す理由 〜イノベーションに女性視点を活かすには?〜違いはイノベーションの種である 〜
【小島美佳】 ☆ 前編:ダイバーシティマネジメントを考える ― 「マイノリティ」な女性たちが辿った戦いの変遷 ―後編:ダイバーシティマネジメントを考える ― 「マイノリティ」な女性たちが辿った戦いの変遷 ―女性らしさを失わずに管理職になれるのか ー 社内ポリティックスを優雅に活用するために ―前編:日系企業で外国人社員は生き残れるか?
—————————– 参考 Sex differences in the functional organization of the brain for language 「わかりあえないことから」平田オリザ