プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

シナリオプランニング入門 第03回:シナリオプランニングと組織学習2013年12月17日

2013年12月17日 新井宏征

●企業におけるシナリオプランニング

企業においてシナリオプランニングを実践する目的はさまざまです。 そのうちのひとつに「戦略を実行すること」があります。企業が戦略を実行していくためには、企業のビジョンやミッションを元にした企業戦略があり、それらとの整合性を念頭において、部門や部署の目標を設定し、それらを実行に移していくことになります。 すでに策定されている戦略などを踏まえ、一度、視点をより遠くまでの未来(例えば戦略が5年なら、シナリオは10年以上といった具合)まで広げることで、そのような戦略を実行するために意識すべき不確定要素を意識できるようになります。

シナリオプランニングによるシナリオ作成を通して、参加者全員が自社が直面している課題や未来のある時点で起こり得る事態を意識することができるという「組織学習」の効果も期待されています。 日本と比べてシナリオプランニングの活用が進んでいる海外では、最近、シナリオプランニングを組織学習に応用することについての議論を目にすることが増えてきました。 例えば、Chief Leaning Officerの2011年2月号では、シナリオプランニングなどを用いたコンサルティングサービスを提供している戦略家のDaniel W. Rasmus氏が執筆した”Scenario Planning the Future”というタイトルの記事が掲載されています。 この記事で、彼はシナリオプランニングを実践することで組織学習が行われるという主旨の議論を展開しています。その中の囲み記事として、シナリオプランニングを実践する際の8つのルールを載せています。

  1. シナリオプランニングに専念させる(他の業務と一緒にしない)
  2. コンサルタントを雇う
  3. 外部のステークホルダーを巻き込む(顧客や業界アナリスト等)
  4. 社内で影響を持つステークホルダーを巻き込む
  5. 解決すべき問いを選ぶ
  6. 早い段階で学習モデルを導入する
  7. シナリオプランニングだけではなくストーリーテリングも導入
  8. 学習したことをそのままにしない

例えば、4番目のルールである「社内で影響を持つステークホルダーを巻き込む」は、組織でシナリオプランニングを実践していく上で非常に重要な点です。

●シナリオプランニング プロジェクトの前後を見る

シナリオの作成方法やそのためのワークショップの運営方法というのは、実はそこまでは難しいものではありません。最近ではシナリオ作成のためのプロセスもさまざまなところで公開されていますし、ワークショップの運営方法については、2番目のルールにあるように「コンサルタントを雇う」ことで解決することもできます。 それよりも難しいのは、社内でシナリオプランニング作成の意義を理解してもらう点です。そのためには、「社内で影響を持つステークホルダーを巻き込む」ことを通して、シナリオプランニングをプロジェクトとして実施する意義を理解してもらわなくてはいけません。

よく言われるようにシナリオプランニングで作成したシナリオはアウトプットではなく、何かのインプットになります。戦略を見直すためのインプットかもしれないですし、戦略の実行可能性を考えるためのインプットかもしれません。 つまり、シナリオプランニングを実行する際に重要なことは、シナリオプランニングのプロジェクトそのものだけに注意を払うのではなく、そのプロジェクトを実行する意義や目的を確認した上で、その結果作成したシナリオを何のインプットにするのかという、シナリオプランニング前後の部分なのではないでしょうか。