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シナリオプランニング入門 第05回:シナリオを作れば十分か?2014年2月24日

2014年02月24日 新井宏征

前回のシナリオプラニング入門では、組織でシナリオプラニングに取り組むメリットをご紹介しました。 このようなお話しをさせていただくと、組織でシナリオプラニングをやる意義についてはご理解いただけるものの、実際に組織の中でシナリオプラニングをどう位置づければ良いのかについて質問をいただくことがあります。

その中には「シナリオプラニングの良さはわかりました。では、これまでやっていた戦略の立案などをやめて、代わりにシナリオプラニングを実践すれば良いのでしょうか?」といった質問があります。 答えはNOです。この答えをきちんと実感していただくために、今回は「シナリオ」と「戦略」の違いを理解していただくことにしましょう。

●シナリオとは「外部環境」のこと

シナリオプランニングで作成するシナリオとは外部環境です。シナリオを作成する際にはドライビング・フォースを出す作業が非常に重要になってくることはお伝えしました。 このドライビング・フォースを出す作業とは、言い換えれば、外部環境をさまざまな観点から理解するための作業です。自社を取り巻く外部環境は、競合企業やパートナーだけではありません。いわゆる「STEEP」で表すことができる社会、技術、経済、環境、そして政治などの幅広い範囲を見なければいけません。

ここで大切なのは、この「幅広く見る」ということです。普段、自分たちが見慣れている世界を超えて、より広い世界を見る。しかも、その世界は今から10年後といったように、しばらく先の世界であるということが大切なのです。 シナリオプラニングを行って、一度はそういう世界を見据える体験をすることで、なるべく自分自身の偏った見方を排除しながら、世界を客観的にとらえるという経験がシナリオを作成することの意義になります。

●戦略とは「意思」のこと

では、なぜシナリオを描くだけでは十分ではないのでしょうか。先ほどシナリオは外部環境だとお伝えしたとおり、それは自分たちを取り巻く「環境」でしかありません。 一方、その「環境」の中で自分たちとしてどの方向に進みたいのか、何を実現したいのかといったことを考えるのが「戦略」です。言い換えれば、戦略とはシナリオにおける自分たちの「意思」を表現したものです。

「意思」と言うと曖昧に響くかもしれません。たしかに、戦略とはもっと論理的で、緻密に作られていくものではあると思います。しかし、その中に込められているのは、「外部環境」の中で自分たちがどうしていくのかという主観的なものであることを意味しています。 そのためには、ここで考えるべきものは、厳密には「戦略」ではなく「アクションプラン」や、もう少し曖昧な「目標」かもしれません。それをどのくらいの大きさで考えるのかは、プロジェクトごとに決めることになるでしょう。

●シナリオは「インプット」である

まとめると、シナリオプランニングを実践し、シナリオを作成することは重要です。しかし、シナリオを作成するだけでは十分ではありません。 シナリオプランニングのプロジェクトで作成したシナリオは「アウトプット」ではありません。次につなげるための「インプット」です。今回はわかりやすくするために、そのつなげる「次」を「戦略」と表現して、シナリオをインプットとして戦略を考えるということをお伝えしました。 シナリオを元に考えるものが戦略であれ、アクションプランであれ、シナリオを作成して終わりではないということは常に頭に置いてください。