新年のご挨拶
明けましておめでとうございます。謹んで新春の喜びを申し上げます。
2019年は皆さんに取ってどのような1年だったでしょうか。
6年くらい前になりますが、私たちは昨今の環境変化を題材に4つのシナリオを想定しました。
いま改めて見てみると、多くの企業は左上を目指して、組織力の再生に取り組んでいるように見えます。
左上のエリアに適合する組織力にいかにシフトするのか。
その鍵の一つは現場のミドルが組織の状況をきちんと見立て、打ち手を仕立て、動かす=経営者化すること。そしてもう一つの鍵は、そうした動きを支援する環境を経営トップや間接部門が作ること。ではないでしょうか。
昨年、私たちが事業と組織の新しい関係を探求する、想いのあるクライアントの方々と一緒に取り組ませて頂いた印象的な3つのプロジェクトも上記の二つの鍵を意図したものでした。
冨士研究所長の熱い思いでスタートしたボトムアップのプロジェクトです。全社で実施している従業員満足度調査のスコアが思わしくなかった(=“組織の活力を引き出す火の起こしどころがある”カッコ内は私の解釈)ことをキッカケに、ボトムアップ(手挙げ式で係長クラス主体の13名のメンバー)で行ったプロジェクトです。
4ヶ月間にわたり1日の集合ワークショップを4回行うことで、従業員満足度の数字の裏にある、症状とそれを作り出している行動や構造を対話で分析し、改革の施策を所長に提案するプロジェクトです。
プロジェクトを通じてメンバーの活力が引き出され、提案内容も斬新かつ現実的で、多くはそのまま研究所の施策として採用され、これから動かしていくフェーズに入っています。
“落とし所を最初から意識した冷めたプロジェクト”にならず、プロジェクトの中で、「フォーミング>スチーミング>ノーミング>パフォーミング」が適切に起きた最大のポイントは、冨士所長の「皆が考える主体的な変革を支え成長してもらいたい」という強い思いと、ファシリテーターとしてのセンス(プロジェクト外メンバーの巻き込みを、既存の研究所全体会議のスタイルを変更して行った)ことによるところが大きいと思います。
「支援と試練のバランスをとる」は組織の原則ですが、昨今の環境変化による現場の経営者の「試練」増を「支援」するべく、人事部などの間接部門がビジネスパートナーとしての機能を強化する必要性が高まっています。
ロクシタン・ジャポンは約20年前に設立されて以来、急成長してきた組織ですが、急成長の副作用も出始めた約3年前に、南米で大きな実績をあげてきたニコラ氏が社長として着任し、「働きやすさと働きがいのある組織」にすることを組織の第一優先に決めて組織変革に取り組んでいます。この「人」を中心にした組織変革のキーマンとして人事部長の水田氏が3年前に採用され、コアの人事業務のレベルアップを着実に取り組んできました。
そして、人事部のレベルアップのフェーズ2として人事部員のHRBP化を準備期間の1年を経て行うことを昨年春に打ち出しました。
HRBPはコンセプトとしてはデビッド・ウルリッチ氏が1990年代に提示し、GEをはじめ欧米の人事先進企業では取り組まれているとはいえ、現場の経営者の「人・組織面の参謀役を果たす」というのは、難易度が高く、多くの人事部員たちに多くの不安や抵抗がある状況の中で4ヶ月にわたってお手伝いさせて頂きました。
将来/戦略の重視
戦略実現のための組織診断↑変革リーダー育成
プロセス————————————————————人材
シェアドサービス ↓ 従業員の声に耳を傾ける
日常業務/運営の重視
「事業部と人事部との関係性を変える(進化させる)には、人事部員たちの関係性も変え、人事部長と部員たちとの関係性も変え、その為には自分の内面の変容にも取り組む」という、この変革を人事部内のチームビルディング、個々人のリーダーシップ開発につなげて伴奏させて頂いたプロジェクトでした。
その中で水田人事部長はプロジェクトと並行して、1人1人と面談し、自分の人生曲線や個人リーダーシップの結果もオープンにし、最終的には新体制も決断・公表しました。
人事部員にも大きな試練を強いる変革ですので、残念ながら組織を離れる決断をされたメンバーもいました。しかし、覚悟をもって取り組む水田氏とパワーアップしたメンバーが、4月からのHRBP正式スタートを通じてロクシタンの組織力を次のレベルに進化させていくことを信じています。
上席執行役員人事グループ長の岸本氏と1年かけて準備して来たプロジェクト(事例1と2の要素を全て統合したもの)をこの秋にスタートしました。
BGCオリジナル組織診断(単なる従業員満足度ではなく)をもとに戦略議論と組織面の議論を行い、組織変革プロジェクトの設計と実行を通じて次世代の経営会者を育成すること、それを支援する間接部門のBP化を図ることが狙いです。メンバーとして、事業部門の幹部と、間接部門も人事のみならず本社企画、経理、事業部企画のキーマン(カンパニー長から課長レベル)までの選抜メンバーを巻き込んだ取り組みです。
現在は、キーマンが集まって診断結果を読み解き、重要課題を見立て、どう変革していくかのプロジェクト設計を行うフェーズ1が年内に終了したところです。
このプロジェクトの重要なキーマンの1人は実は創業者の長谷川 末吉氏(故人)です。
長谷川氏の著書の『松籟やまず』の一説に
“リーダーは「環境適応業。社会の動き、自社を取り巻く環境を把握し、自社の経営状態を分析し、問題を発見したら、改善策を講じ安定軌道に乗せる役割を担っている”
“人が行動し、人と交わり、人脈ネットワークをつくり、そこから生きた(過去のものでない)情報を収集する努力”は組織の到るところで起きているだろうか?
リーダーは“目標やビジョンを示すときに、同時に現状を捉えた上での具体的青写真を示している”だろうか価値観、目標、情報の三つをトップから入社間もない社員が共有できる会社がもしあれば、その会社は恐るべきエクセレントカンパニーだろう”
というフレーズがあります。
このプロジェクトでも冒頭に紹介しました。プロジェクトを通じてメンバーが自問し、立ち返る、重要な応援メッセージです。
私たちにとって何より嬉しいのは、時代を超えてお客様の中にある大切なものを繋ぐバトンリレーに関わりながら組織の生命力を再生することに関わらせて頂けることです。この後のフェーズもしっかりサポートさせて頂きたいと思います。
今回はご紹介できませんでしたが、その他にも沢山のお客様と協働しながら共に進化させて頂いてきましたことに深く感謝いたします。
さらに、より良いソリューションを多くの組織にご提供していくために、外部パートナーシップ面でも3つの重要な出来事がありました。
我々のソリューションの核でもある個人と集団の変容心理学「プロセスワーク」をビジネスコーチングに応用し、素晴らしいプログラムを作り上げた2人の創業者が運営するGlobal Coaching Institute(豪)と業務提携を結び、日本初となる同社のコーチ養成講座を昨年夏に開催いたしました。記念すべき初回コースをご受講いただいた業界の強者?達も絶賛の内容で、2020年7月4日から連続5日間の対面+テレ・ミーティングの同じ内容で開催いたします。
外側の世界の変化に対応するリーダーの内面の変容を支援する素晴らしい360度アセスメントがThe Leadership Circle社(米)のLeadership Circle Profileです。弊社ではこれまでも集合研修やコーチングで活用して来ましたが、新生TLCジャパンが設立されて最初の資格認定講座において弊社メンバーの4名が新たに資格を取得しました。GCIコーチングと相まって、今年も各種コーチング(エグゼクティブコーチング、プロジェクトコーチング、チームコーチング)事業を強化していく予定です。
この数年、非常にお世話になった秋田住友ベーク社での「ミドルを経営者化するためのマネジメント力強化」研修の標準化が進んだ1年でした。
ここから切り出された内容が日経ビジネス課長塾の定番講座に盛り込まれることになり、また外部パートナーの研修会社を通じて、製造業の部下長層を中心に取り入れて頂いています。
これまでの階層別研修の概念を打ち破り、タスク(事業課題)面面を統合的に見立てて、動かしていくプログラムで、特に上司(課長向けであれば直属上司の部長)を巻き込むことで、ミドル育成を人事部任せにすることなく、上司にもコミットしてもらう実践組織開発スタイルのプログラムです。
こちらは定期的にセミナーにおいて詳細説明とエクササイズの体験をしていただく機会を設けていきます。(次回開催は2月19日(水)15:00-17:30@東京)
2020年もクライアントの皆様との組織力強化パートナーとして全身全霊で関わり、共進化していけたら幸いです。
2020年1月 バランスト・グロース・コンサルティング 代表 松田 栄一