プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

新年のご挨拶と2018年の足跡2019年1月11日

 

明けましておめでとうございます。謹んで新春の喜びを申し上げます。

2018年は皆さんにとってどのような1年だったでしょうか。

 

時代は変化の真っ只中にあります。近年の外部環境の変化(Change)は速く大規模で、企業にも大きな転換(Transition)を迫ってきますが、企業内の個人や集団の内面(マインドセットやスキルセット)の変容(Transformation)はゆっくりとしか進みません。

 

企業の現場では、そうした変化と変容の間で様々な葛藤を抱えていて、効果的なアプローチを真剣に模索しています。そうした中で、企業と研修会社やコンサルティング会社との関係、企業内の人事部と事業部との関係、事業部内の部門間の関係、部門内の上下の関係など、あらゆる関係の再構築が行われつつあるようです。2018年の私達も、事業と組織の新しい関係を探求する「想い」のあるクライアントの方々と素晴らしい協業・挑戦の機会を頂けたことを心より感謝しております。その中から、私達が2018年に感じたトレンドと代表的事例のいくつかをご紹介させて頂きたいと思います。

 

バランスト・グロースからみた時代の3つの変化と代表例
  1. 部長の経営者化:

戦略立案と実行のサイクルを回していく鍵は、現場に近い情報を持つミドルが「経営者と同じ目線で事業をとらえて」、「周囲を巻き込んで」主体的に課題解決を行えるようにすることです。そのために、戦略にも人にも強い「総合格闘家型変革リーダー」育成のニーズが高まって来ています。

【秋田住友ベーク社様「次世代経営幹部育成プロジェクト」】

次世代経営幹部候補の部長たちを対象に、

・ステークホルダーへのインタビュー含めて、事業と組織の現状を「見立て」

・あるべき姿に向けて解決すべき「重要かつ未解決な課題とアプローチ」を「仕立て」、

・数名のグループで小さな一歩を実践する

ということを行いました。
更に個人としても、

・360度リーダーシップアセスメントを通じて自分自身の内面も見立て

・職場の部下との関係改善へのアプローチを「仕立て」

・実践する

ことで、集団と個人、見える部分と見えない部分(組織文化や個人のメンタルモデル)を統合的に扱う4ヶ月に渡るプログラムを実施させて頂きました。

この事例で嬉しかったのは、

・経営者とミドルをつなぐために、普段は交わされにくい思いや悩みを通訳したり具体化したりすることで、両者の間に新しいコミュニケーションルートが出現し、より建設的な相互関係が芽生えてくること

・一般論として人や組織の見えにくい部分の理解が不得手そうだと思われがちな技術者たちが、そのための知識とコツを少しお伝えするだけで、実に深いレベルで内省し、また対話しあえようになること

・最初は他責モードであっても課題構造を俯瞰すると、目線も主体性もあがり、従業員マインドから経営者マインドにシフトしはじめること

を目の当たりにできたことです。

 

  1. 人事部と事業部との関係の変化:

この数年、現場の組織変革支援者としての人事部員の役割強化(グローバル対応含む)をする動きが活発になってきていて、「戦略人事」、「ビジネスパートナー」という役割が人事機能の中でも注目されてきています。それと歩調を合わせるように2018年は日本で「組織開発(OD)」に関する良書が複数発行され、かつて日本企業のお家芸と言われていたODが米国から再輸入されバージョンアップする時期に差し掛かっているようです。

【日本たばこ産業株式会社多様化推進室様「ODコンサルタント養成講座」】

弊社では3年前から「ODリーダー養成講座」という公開講座(3ヶ月、全6回)を東京で4期、名古屋で1期提供してきましたが、そのノウハウをベースに大手研修機関のセルム社と協力してクライアント・チームの主要メンバーの方々に向けて2日間の研修プログラムとしてご提供させて頂きました。

 <プログラム概要>

  • ODの歴史
  • ハーバード・ケース「米国コーニング社の組織変革と社内ODコンサルタントの活躍事例」を元に、社内組織コンサルタントの役割を俯瞰する
  • 実際の組織内の課題を扱った分析演習とロールプレイ
  • ODの周辺領域(チェンジマネジメント、コンフリクト・マネジメントなど)
  • 組織開発事例紹介
  • 社内ODコンサルタントが現場に入っていく時のポイント

この事例で嬉しかったのは、

  • レベルが高く多様性に富んだ受講メンバー(人事部門経験の長い人、事業部の企画部門を複数経験した人、社外でシステムコンサルタントとして組織変革に関わっていた人等)です。吸収も早く、教え手冥利に尽きましたし、そもそもこうした多様なメンバーでチームを構成した会社にも感心しました。
  • 同じチームのメンバーが一緒に受講して頂いたことでODチームの方向性と現状認識、共通言語もできてチームビルディングが進んだように思えたこと
  • 特にキーマンのお一人が普段からチームで「総合格闘技型OD」を目指すと仰っていて、それは我々BGが普段話しているキーワードと全く同じで、同志が増えたように感じ心強かったこと

です。

 

3.M&Aや親会社—子会社の体制再構築など組織構造変化にたいする社員のケアの必要性:

M&A後の統合プロセスの重要性は随分昔から経営テーマとして脚光を浴びていますが、これまではほとんどのケースは外資系人事プロフェッショナルの古典「MBAの人事戦略」(Dウルリッチ著)の有名なチャート(下図)の上半分への対応に終止していていましたが、近年は右下の部分の重要性も注目されつつあるようです。

            将来/戦略の重視

    戦略実現のための組織診断↑変革リーダー育成

プロセス————————————————————————人材

    シェアドサービス    ↓ 従業員の声に耳を傾ける

              日常業務/運営の重視    

実際、吸収されて消滅する側の従業員が、構造変化に適応できず、新しい組織の中で萎縮する、被害者意識からプライドを取り戻そうと徒党を組んで、主流派に抵抗する、水面下でネガティブオーラ垂れ流すなどの事態が起こり、統合効果が現れるまでに、大きなロスが組織に生じてしまうケースも少なからずあるようです。そうならないためには、大きな変化に直面した従業員が、ポジティブに古いやり方を捨て、新しいやり方で始められるかどうかにかかっています。

【PTS株式会社様「トランジッション・セミナー」】

PTS様はセゾングループ時代からの歴史ある旅行代理店で、現在はJTBグループの子会社です。石田社長は、JTB本体から経営改革の使命をもって5年前にPTS社長に赴任し、以来、事業構造改革と社員活性化(例えば、PTSならではの存在価値は何か、やりがいをもって仕事をしてもらうためにどうしたらどうしたら良いか)をプロパーの経営幹部と共に考え、実践して地道に成果を挙げられて来ました。しかしグループ経営方針の変更の中で、グループ会社としての組織の幕を下ろす役割を担うことになり、吸収されていく社員達に、最後に何をしてあげることが、彼らにとっても、JTB本体にとっても良いことかを我々と議論を進めることになりました。その結果、現場のミドルたちに対して、現在の業務をしっかりと完結させた上で終わることで新しい業務を気持ちよくスタートさせる「トランジッション」のプロセスを理解・体感してもらい、彼らの部下の不安に対しても上司として適切なサポートをしてあげる状況を作ることが最重要だと判断し、統合に向けた作業に追われる現場の人たちを年末に集めて1日研修を実施しました。

この事例で嬉しかったのは

・石田社長の「愛」のプロジェクトを実現することに賛同し協力して頂いた経営幹部たちの中にも本気の「愛」を感じ、またそれを現場のミドルがしっかりと意気に感じて受け取ったこと

・現場にあった漠然とした不安を無いことにするのではなく、あえて表面化させ共有し、向き合って頂く中で、各人の中で「会社への感謝や、喪失感をきちんと認識し、心理的に消化できた」「部下の不安にも寄り添えます」と言って頂けたこと

です。

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変化し続ける環境の中で、人や組織を管理することは、リーダーが直面する最も難しい課題の一つですが、このような状況だからこそ、人の持つ「知恵、勇気、愛」などの素晴らしい側面が思わぬ形で現れる好機でもあると実感させて頂いた2018年でした。ここにご紹介できなかったクライアント様と歩ませて頂いた数々のプロジェクトも含めて心より感謝しております。

 

2019年、BGは更に皆様とよりよい協働ができるよう4つの進化をしていく予定です。

1.グローバル組織課題への対応:2018年も海外現地法人の課題を日本人と現地法人メンバーが共に取り組むアクションラーニングや、外国人経営リーダーによる日本法人のチェンジマネジメントのサポート、米国グローバル企業の選抜部長研修への講師派遣など英語でのデリバリーにも力を入れて来ましたが、今後もさらにグローバル組織課題への対応力を高めていきます。

2.HRビジネスパートナー化サポート:元々は外資系で始まった流れですが、「事業戦略実行に役立つ人・組織面での支援のあり方」について正解はなく、この面で先端を行くとされる企業であっても悩みや・課題は尽きないテーマです。実践と探求の良質なコミュニティーを企画・継続開催していきます。

3.エグゼクティブ・コーチング機能強化:これまでチームコーチングや研修仕立てのプログラムなど複数メンバーへのアプローチが多かったのですが、コーチングの国際資格を持ったコンサルタントが増えてきたことで、彼らが元々持っていた戦略コンサルとしてのタスク面への介入スキルと、心理的側面中心に介入するコーチングのスキルを統合してBG独自のエグゼクティブ・コーチングを一部クライアントに提供し始めています。今後この機能をさらに強化していきたいと考えています。

 

4.人・組織課題の見立て機能強化:経営リーダー層は着任して4年〜6年で具体的な成果、後継者育成、組織OS(チームワークの質)バージョンアップなど多角的な成果を上げることが求められています。そのためには事業の効果性を削いでいるボトルネックを突き止めて、そこにアプローチすること、そしてボトルネックは変革と共に次々に変化していくので、クライアント自身が自ら組織を診断し解決するメソッドを内面化することが重要だと思っています。我々は現在はプロセスワークという心理学的メソッドを軸に組織課題を見立てていますが、ザ・ゴールで有名な制約理論も組織課題をシステム的に捉える有用なツールであり、併用することでクライアント自身が自ら複雑な課題を紐解いて解決する能力を飛躍的に高めていけるはずです。またサーベイやアンケートなどの組織診断ツールも見立て力を高める重要なツールです。TLCジャパンの提供する360度リーダーシップアセスメントは私の知る限り、世界最高のツールの1つですが、私自身がTLCジャパンのアソシエイトとしても参画することで、その知恵をより深いレベルで日本のコミュニティにお届けしていきたいと思っています。また、組織診断に関しても独自ツールの開発がかなり進んできましたので、今年の前半にはベータ版をご案内できる予定です。

 

2019年も皆様の組織力強化のパートナーとして、多様なメンバーと共に様々なプロジェクトに全身全霊で関わって行きたいと思っております。また、人・組織に関する様々な知見をより分かりやすく情報発信することにも力を入れていきたいと考えております。

 

今後とも引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

バランスト・グロース・コンサルティング 代表取締役 松田 栄一