個人同士、組織同士の対立関係を扱うにはプロセスワークの考え方が有効です。具体的技法としては、ワールドワークやエンプティーチェアーなどがあります。これはいわば「根本治療」であり、難易度が高くて時間もかかります。よって、応急処置の手段も同時に備えておく必要があります。
明日にでも使える応急処置としてDESCメソッドを紹介しましょう。さわやかな自己主張であるアサーションの技法でもあります。
以下の流れで「わだかりのある相手」に対してコミュニケーションします。
D: Describe(描写する) → 客観的な事実やデータ
E: Express(思いを表現する) → 「私はこう感じる」という主観
S: Specify(相手への願いを特定する)→ 何もかもではなく、1つに絞る
C: Consequences(予想結果を共有する)→ Win/Winの結果を互いにイメージする
主人公は営業担当者。わだかまりのある相手は製造部門の鈴木課長です。なぜなら、製造部門による度重なる納期遅れに、営業としてはイライラしているからです。DESCメソッドを使って語りかけましょう。
D: Describe(描写する) → 客観的な事実やデータ
「鈴木課長。私の記録によると、10か月連続で納期遅れが発生しており、平均で8日間の遅れです。」
E: Express(思いを表現する) → 「私はこう感じる」という主観
「納期遅れに対して、驚き、困惑されているお客様の前で、私は本当に申し訳ない気持ちになっています。当社のブランドに傷がついたかと思うととても残念です。ご理解いただけますでしょうか。鈴木課長」
S: Specify(相手への願いを特定する)→ 何もかもではなく、1つに絞る
「せめて来月6月は、そして3つある商品のうち一番重要な商品Cだけは納期を守っていただけますでしょうか。」
C: Consequences(予想結果を共有する)→ Win/Winの結果を互いにイメージする
「そうやって信頼回復できれば、お客様の年間発注計画といった重要な情報も開示してくれるかもしれません。これは営業がぜひ欲しい情報であると共に、製造計画を立てる上でも極めて役立ちますよね。」