2013年08月24日 小島美佳 [バランスト・グロース パートナー]
2000年ごろから注目されはじめ、頻繁に使われるようになった「ダイバーシティマネジメント」という言葉。振り返ると既に10年ほどが経とうとしています。そして雇用機会均等法が制定されてから41年。 まだまだ日本企業や国の組織には重要なポストに女性が少ない、など世界的にダイバーシティマネジメントの取り組みが遅れているとされる日本ですが、時代を遡り、私たちの先輩であるビジネスウーマンの苦労話をお聞きすればするほど、確かに現在は女性にとってだいぶ働きやすい職場が多くなってきている、そんな視点にも立てる気がします。
本稿では2部にわけて多様な価値観を組織で活かしていくために得られるインサイトを「マイノリティ」の視点で描いてみたいと思います。多様化する組織の在り方、その中で得られる価値の増大という課題を抱えている皆さまへ、刺激になる内容をご提供できれば幸いです。(前編はこちらからお読みいただけます)
女性や外国人など、異なる価値観を持つ人材をマイノリティとして組織に迎え入れ、活用しようとする組織は、果たして彼らの特性や能力をどこまで理解しているでしょうか。そして、採用するからには何か期待があるはずですが、その内容はどのようなものなのでしょう?彼らに何を期待し、どのように能力を発揮してほしいのか。当初は曖昧でも、イメージを構築し続けることが重要であると思います。もし、組織の既存メンバーと全く同様の価値観や行動様式を持つ人を求める場合は、あえてマイノリティに手を広げ、エネルギーを使う必要はありません。 多くの場合、企業は何か「新しい風を吹き込んでくれる」ことを期待していますが、これは組織とマイノリティ人材が共に創造していく、とても根気のいるプロセスであり、彼らへ丸投げする類のものではありません。採用当時は、れっきとした目的がある場合でも、彼らを迎え入れた後も継続的に、丁寧に育てていく必要があります。
さて、皆さんはビジネスの場面において男性と女性がとる行動の違いについて、考えたことはありますか?或いは、男性と女性の違いについて実際に職場で議論されたことはあるでしょうか。男性と女性は、脳の構造から異なるとも言われており、女性のほうがマルチタスキングに向いている、女性は出世に対する興味が薄い、組織の理論よりも「正しいことを行う」ことへの執着が強い…など様々言われています。なかなか内容としては興味深いものがあります。 それから、こちらは私自身の経験によるものですが、ダイバーシティのトレーニングで男性と女性に分けて性差を議論いただくと、実は男性も女性も互いの違いをとても良く理解しています。その理解が組織で活かされない理由は、「新しい組織づくり」を共同で創っているのだという意識が持てていないだけ。そんな風に感じるのです。
異なる価値観を持つ人材を組織に迎え入れるということは、これまでに組織が受け継いできたルールや行動様式に風穴を開けることにもなります。これまで居心地の良かった環境や常識が覆る可能性があるということで、そのプロセスが穏やかであるはずがありません。どんなに頭で分かっていたとしても、異なる価値観がぶつかり合う瞬間は、表面的であってもなくてもストレスがかかるものです。その時、個人のレベルにおいてはリーダーとしての成長機会が存在します。慣れ親しんだものを否定される感覚、自分が持つ偏見との戦い、理解しがたい軸で評価される感覚・・・心の内側では様々な葛藤が生まれることでしょう。そして、個人のレベルで保持する葛藤は組織全体に広がっていきます。 この手のストレスは異なる価値観が共存する組織においては不可避のものです。しかし、私はこれらの葛藤こそが組織づくりの種になると信じています。多くの企業では、こういった葛藤にあまり焦点は当たりません。おそらく、マイノリティ人材(或いはマイノリティを部下に持つマネジャーが)独自の方法で乗り越え、時には乗り越えられずに退職してしまうケースがほとんどなのでしょう。
企業側としては、これらのダイヤログを継続的に行う土壌づくりをすることで、彼らのストレスを成果へと結びつける手助けができると思います。一つの現場で起こっている葛藤は、おそらくは他の現場でも起こっていることでしょうし、それらの内容を聞くだけでも参考になるものがあるはずです。違いを議論することは差別ではなく、互いを理解するための重要なプロセス。 一例として、マイノリティ人材を持つ上司のみを集めたトレーニング、マイノリティ人材のみを集めたトレーニングなどがあります。最初はネガティブな内容ばかりが出てきていても、次第に相手の視点に立った発言や解決先を自分たちで見つけてゆくものです。彼らが本音と葛藤を語り合い、互いに刺激し合うことで少しずつ新しい風土を培っていくことができるのではないか。そんな風に私は思います。
ダイバーシティマネジメントについては、今後も寄稿を続けます