プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

『受講レポート』「世界最高クラスの講師から学ぶプロセスワーク(経験者向け:ファシリテーターとしての卓越性を育てる)」2017年3月25日

「世界最高クラスの講師から学ぶプロセスワーク(経験者向け:ファシリテーターとしての卓越性を育てる)〜職場におけるランク/力/周縁化の力学を扱うには」

2017320日(祝) -21(火)10:0017:00

『受講レポート』 バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 取締役 西田徹

 

<1日目>

 【導入レクチャー】

パワーとランクに関する導入レクチャーとして、スティーブン博士ご自身が幼少時にお兄さんに体力差で圧倒されたり、子供同士のけんかに巻き込まれたりしたエピソードを紹介。ランクとそこから生じるパワーを上手に使うこと、そしてそのむずかしさを学びました。また、ランクを持つ部分に私たちは無自覚になりがちであることも重要なポイントでした。

 

【ペアになってのランクのエクササイズ その1】

相手に自分が持つ3種類のランクについて自己分析を語りました。

 Social 社会的

Psychological 心理的

Moral / Spiritual モラル・スピリチュアル

 次にパートナーが相手の中にこの瞬間のランクを見つけて伝えました

 さらに、自分がランクが低いと感じていることを相手に語り、それについて何ができるかを話し合いました。

 

【図1に関するレクチャー】

 

(クリックすると図が拡大されます)

 

ゴーストが症状を引き起こしていること。ゴーストと主流派の間で活発なディスカッションが必要であると。そのためにはゴーストにとって、安全と信頼が必要であることがポイントでした。プロセスワーカーが行う手順は①~⑤で示されています。

 

【重要な質問】

「症状」と「ゴースト」の違いがよくわからない、という質問がありました。これに関するスティーブンの回答が非常にわかりやすかったです。

 椅子ひじ掛けに水が入ったペットボトルを置き、何か目に見えない力が椅子を揺り動かしているとしました(実際はスティーブンが揺らしていたのですが)。当然、ペットボトルは椅子から落ちました。これが「症状」です。ペットボトルが落ちたのが、明らかに目に見えました。でもそれを引き起こしている原因は探求せねばわかりません。これが「ゴースト」です。

 

【ケース】

参加者のAさんがケースを提供してくれました。

 Aさんが所属する組織は短期的業績が非常に良いものの、中長期的な視点が欠けており、既にいくつかの症状が出始めていました。困ったことにAさんの上司であるB組織長は中長期の投資を行う権限をもっていません。できることはそのまた上司であるCさんに現状を赤裸々に報告することですが、それにはBさんのエッジがあってできていませんでした。Aさんが行ったことは妨害(Disturb)です(図2参照)。

 (クリックすると図が拡大されます)

毎日のようにBさんに「このままでは大変なことになる」を伝えたのです。結果Bさんはエッジを超え、2次プロセスである「自分の上司のCさんに赤裸々な報告をし、中長期手な投資のGOサインをもらう」にたどり着けました。

 ところが別の問題が発生しました。Aさんの活躍が目立ってしまい、斜め上の上司(Bさんから見ると部下)数人からの露骨な反発が始まったのです。「生意気だ」「経験の無いお前がなにを言ってるんだ」「自分が何をしているのかわかっているのか!」などなど。そして、こんな本音もありそうでした。「俺を飛ばして勝手にBさんにアプローチをするな!」と。

 また、そこにはジェンダーの問題もからんでおり、解決を困難にしていました。スティーブンからのアドバイスは以下です。3つすべてをやれという意味ではなく、この状況からポジティブな何かを得るためのヒントです。

 1 毅然としたNOを相手に言う

2 相手の言い分の一部からメッセージ(Wisdom)を受け取る

3 相手の態度から学ぶ(これからの自分に必要なものがあるかもしれない)

 

<2日目>

 【レクチャー】

内部のODコンサルタントには2つの選択肢があることを学びました。自分も当事者の一部となって組織変革を後押しするアクティビストの立場。そしてもう一つは、外部からの公平な立場でのぞむファシリテーターの立場です。これらを区別し、意図的に選択することが重要です。

 

【全体での対話】

前日のケースから、ジェンダーのテーマが場に浮上してプロセスする必要を感じたスティーブンは以下の3つの質問を我々全体に投げかけました。

 1.    How do Japanese women manage dominant men?

2.    What would Japanese women like in support from men?

3.    What are men’s (honest) response?

 1 日本の女性は支配的な男性をどうマネージしているか? (女性にだけの質問)

2 女性はどのようなサポート(男性からの)を望んでいるか? (女性にだけの質問)

3 その事に対する男性の本心は? (男性にだけの質問)

 対話の内容そのものは守秘義務上お伝えできませんが、とても豊かな時間でした。

 また、関連するトピックとしてNASAを支えた黒人女性たちを描く、映画『Hidden Figures』のあらすじ紹介もありました。当時のアメリカで、女性であることと黒人であること。まさに二重のハンディを乗り越えて大活躍した3名の物語だそうです。

https://youtu.be/RK8xHq6dfAo

 

【ペアになってのランクのエクササイズ その2】

まず自分が最もパワフルだと感じた時を思い出しパートナーに語りました。

 次に自分が誰かに軽んじられた体験を思い出し、何が起きたのかの詳細をパートナーに語りました。

 そして最後に、最初のスッテプで取り戻したパワフルな場所から、軽んじられた体験にかかわる解決を得る取り組みを行いました。

 

【仮想ODコンサルティング実習】

スティーブンが実際に行ったODコンサルティングの事例をもとに、図1の5つのプロセスをどう設計するかを5人ずつの4グループに分かれて話し合いました。

 

① Aware of symptom 症状に気づく

② Message メッセージ

③ Vigorous Disucussion 活発な討議

④ Growth of Mainstream メインストリームの成長

⑤ Disturber’s Change ディスターバー(ゴースト)の変化

 

事例は以下の内容です。

 「ある病院で巨額の収入を生み出している心臓外科のチームがありました。そこには4人の心臓外科医、7人の麻酔科医が中心にいて、一時的に心臓の代わりをする機械のエンジニアであるプロフユージョニストと、看護師で構成されるチームでした。

 手術は麻酔科医が麻酔をかけることから始まります。そして一時的に心臓の代わりをする機械が接続されたら、残された時間は90分だけです。その緊迫した時間で心臓外科医はあざやかなテクニックを駆使して手術を完了し、患者の命を救います。

 ところが心臓外科医と麻酔科医の間でいがみ合いが起きました。心臓外科医のひとりが極めて先端的な治療を実施したいと言い始めたのに対し、麻酔科医たちは「それは無理だ」「その術式が必要な事例は稀だ」「それを行っている病院に紹介すればよい」と反論し始めました。関係は急速に悪化し、麻酔科医たちはストライキを行うという事態にまで悪化したのです。それを懸念した病院のトップ層の2名がスティーブン博士に解決を依頼したというわけです。」

 

4つのチームで考えた対処方法を発表した後、スティーブンが実際に行った組織開発コンサルティング内容の紹介がありました。

 1月1回のミーティングを3回行ったそうですが、「有望な進展」あり、「ちゃぶ台返し」ありのドラマチックな展開で興味深かったです。また、ゴーストが本音を言っても安全な場面をどう作り出し、主流派とゴーストの間の信頼関係をどのように醸成するか。これが極めて重要なポイントと感じました。

以上