プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

シナリオプランニング入門 第04回:組織でシナリオプランニングに取り組むメリット2014年1月28日

2014年01月28日 新井宏征[バランスト・グロース パートナー]

●そのときグループに何が起こったか

2014年になり、すでに何度かシナリオプランニングのファシリテーターを務める機会がありました。シナリオプランニングのファシリテーターをやっていると、参加する人のモチベーションや日頃の頭の使い方、そして参加する人同士の関係性によって、結果に大きな差が出ることに気がつきます。

先日も、面白い状況を目にしました。 とあるグループでのシナリオプランニングのファシリテーターを務めた時のことです。その場では、私がシナリオプランニングをやる前に別のテーマでのワークが行われており、参加者の皆さんはいくつかのグループに分かれて座っていました。各グループにいるメンバーは、それぞれ別の会社から来た人で、顔見知り同士もいましたが、そのメンバーでグループとなるのは初めてのことでした。

●グループになると起きること

私が担当する前のワークが終わり、いざ、私の出番になった時、あることを思いついたのです。各グループに自分たちで社名をつけてもらいました。同時に、グループメンバーの中で社長を決め、それ以外のメンバーの方には「営業部長」や「開発部長」など好きな肩書きをつけてもらったのです。その上でシナリオプランニングのワークを開始しました。 すると、その日になって初めてできたグループだというのに、すべてのグループがとても保守的なテーマ設定をし、シナリオプランニングに取り組みはじめたのです。

たとえ、そのグループのメンバーが、その日、初めて出会う面々であっても、会社名という「名前」と役職が自分たちに与えられることで、急にそこに組織のような環境が生まれるのです。そして、その中では非常に保守的なシナリオプランニングが行われ始める…。

●シナリオプランニングの意義

もちろん、そのような状態になったのはたまたまだったかもしれませんが、シナリオプランニングのワークに限らず、誰しも「見たくない未来は見ない」という思いを持っています。言い換えれば、自分にとって見たいと思う未来しか見ようとはしなくなります。 そんな状態でもシナリオプランニングをやると効果がある理由のひとつに、無理やり複数の不確実性を同時に見ることができる点にあります。一般的なシナリオプランニングのやり方で取り組んだ場合、外部要因から導き出した2種類の不確実な要因を組み合わせてマトリクスを作ることになります。これによって、強制的に「不確実な複数の事象が同時に起きた場合」を経験することができるのです。

慎重に不確実な状況を予見していると思っていても、多くの場合、ひとつの不確実性しか見ていないことが多いのです。何かが利用できなくなる、あるいは他のものに取って代わるなどということを考えます。しかし、それらが同時に起きることはなかなか想像していない。 そのようなことを擬似的にでも想像することができるのが、シナリオプランニングの良さなのです。